
eスポーツチームとして国内トップを走り続ける「REJECT」。2024年11月に伊藤忠商事株式会社と資本・業務提携を実現し、シリーズBで約10億円を調達。さらには、「Esports World Cup Foundation Club Partner Program 2025」に日本を代表するクラブとして選出された。今、最も注目されるチームのひとつです。
今回、そんなREJECTを率いる代表取締役CEO 甲山氏と、eスポーツを軸にGAMING LIFESTYLE事業を展開するGLOE 代表取締役 谷田さんが対談。お互いの経営観と、eスポーツの未来について語り合いました。
「自分の意思で、責任を取る」
REJECTが貫く、覚悟の経営
甲山さん:REJECTは、もともと一般的なeスポーツチームとしてスタートしました。最初は大会賞金やリーグの報酬、ゲーム内アイテムとのコラボといった基本的な収益モデルをメインに土台をかため、そこから競技の魅力を生かしたタレント事業やストリーマービジネス、スポンサーシップを展開し、現在ではゲーミングデバイスの販売に加え、コンテンツ・イベントIPのプロデュース、プロダクション事業まで多岐にわたる事業を展開しています。
谷田さん:REJECTさんの歩みって、まさにeスポーツチームの成長の縮図だと思うんですよね。競技の枠を越えて、ゲーマーの人生に寄り添おうとするその姿勢がずっと一貫しているなと感じます。
甲山さん:ありがたいです。でも本当に色々ありました。業界に詳しくない若者が始めたチームなので、信頼を得るのは大変でした。だからこそ、社内にはあえて堅い人や経験豊富な人に入ってもらい、組織としての信頼感を築きながら、周りの皆さんの支えに救われました。そんな中で、最終的には「自分の意思で決めて、自分で責任を取る」と腹を括ること。それが、REJECTを続けてこられた理由だと思っています。

会社で寝泊まりする日々だった設立当初
谷田さん:そういう経営の美学に、僕はすごく共感してます。甲山さんとはIVS KYOTOで初めて出会ったかと思いますが、そこから一緒にイベントやスポンサーセールスを手がけたり、気軽にご飯に行ったりと、一気に距離が縮まりましたよね。
甲山さん:あのときの出会いはすごく印象的でした。今では変化を感じる業界の温度感やありたい姿、懸念など色んなお話を共有したり議論する関係になれて嬉しいです。REJECTを信じてくれる人たちが少しずつ増えて、今では本気で業界を変えよう、成長させようとしている人たちとチームを組めて、多くの方に出会えていることは、大きな財産です。

2021年9月に設立した新拠点「REJECT GAMING BASE」
「“好き”のその先へ」
REJECTが問い続ける、意志と覚悟のeスポーツ
谷田さん:eスポーツ業界って、まだまだ大きな可能性を秘めた市場だと思うんです。ただ、若い市場だからこそ、仕組みや価値観が定まりきっていない部分もありますよね。勢いがある反面、ちょっと停滞しやすいというか、足踏みするような瞬間があるのも事実です。
甲山さん:その通りですね。今のeスポーツ業界は、多様な想いを持った人たちが集まっているフェーズにあると感じています。それぞれの立場や視点がある中で、「この先どういう未来を描くのか」が本当に問われているタイミングだと思っています。
たとえば、プロチームに入っただけで満足してしまう選手もまだ多いのが現状です。でもその中でも、努力を続けている人、自分をどう差別化するかを考えている人たちは確実にいて、そんな強い意志を持ったプレイヤーたちが、少しずつ前に出てきているという実感があります。
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甲山さんと「PUBG MOBILE」の元REJECT所属選手たち
谷田さん:「好き」という気持ちだけで、もちろん素晴らしいんです。でも、さらにその先にあるビジョンや覚悟を持って進んでいけるかどうかが、チームとしても個人としても問われる時代になってきたのかなと思います。
甲山さん:そのためには、チーム自体も変わらなきゃいけない。今、REJECTは18のタイトルを扱っていますが、これからはタイトルを絞るという判断も必要だと考えています。本当にやる意味や価値があるのか、世界に通用するのか。そういった問いを常に持ちながら全力で取り組まないと、本当に意味がないですよね。
谷田さん:競技とビジネスのバランスが難しい業界ですが、REJECTさんはそこに真正面から向き合っていると感じます。たとえば、マイナータイトルでもチームとして価値があると判断すれば挑戦する。でも、手広くやるだけではなくて、心から熱量を注げるところに集中しているのが本当に素晴らしいと思います。
甲山さん:結局、「何をやるか」よりも「どういう意志でやっているか」がすべてなんですよね。誰かの言葉で動いてるうちは、覚悟が足りない。だからこそ、自分たちで考えて、自分たちで決めて、自分たちで責任をとる。そうした姿勢が、今のREJECTの根幹にある考え方だと感じています。

2022年2月に「Yogibo」がスポンサーに就任
REJECTが目指す、豊かさでつなぐeスポーツの未来
谷田さん:そもそも、REJECTさんが目指す世界一ってどういう状態なんですか?
甲山さん:まず前提として、僕たちが目指しているのは「EMPOWER GAMING LIFE」です。そのために実現したいことがいくつかあって、ひとつはeスポーツがもっと社会に浸透して、当たり前の存在になること。最近は選手の親御さんと話す中でも、理解が広がっていると感じます。ただ、野球やサッカーのように、完全に一般化するにはもう少し時間が必要かもしれません。
次に、誰もが自分の好きなことを好きと堂々と言える世界をつくること。ゲームを好きだと言うことが、誇りになるような社会が理想です。
そのうえで、そのビジョンを体現する存在として「世界一のeスポーツチーム」をつくること。
よく社内でも議論になるんですが、僕が思う世界一って、BIGタイトルでの競技成績だけじゃなくて、誰よりも応援されていて誰よりも影響力がある状態です。REJECTのグッズやデバイスが、世界中の人に一度は手に取っていただけるような存在を目指しています。

「PUBG MOBILE」部門は日本代表として世界大会へ15回以上出場、2024年には世界大会で初優勝
谷田さん:そういう姿勢は、トッププレイヤーを抱えているというだけじゃなくて、選手が引退した後も活躍できる仕組みを整えて、ライフキャリアまで支えるということとも言えますよね。
甲山さん:はい。eスポーツって、10代でプロになって、10代で引退することもある。でもその後の人生の設計まで考えるのが、僕たちの役目だと思っています。REJECTで得た経験が、次のキャリアにつながるようにしたい。実際に、選手や元選手がイベント運営やスポンサー営業に関わって、新しい役割を見つけています。
谷田さん:REJECTさんって、単なるチームじゃなくて市場の未来を支えたり、豊かな基盤をつくろうとしてるんですね。
甲山さん:そうありたいですね。そして、その未来をつくるには、もっと仲間が必要です。色んなバックグラウンドをもった人に、業界に飛び込んできてほしい。でも、なんとなくじゃなくて、本気で業界を変えるんだっていう人に来てほしいですね。僕は、日本のeスポーツ市場を本気で世界と戦えるマーケットにしたいんです。
谷田さん:そのビジョンを実現できるよう、これからも一緒に挑戦していきたいですよね。ゲームはただの暇つぶしじゃない。カルチャーです。だからこそ、人生のどのフェーズでも「ゲーマーでよかった」と思える世界を一緒につくりたい。
甲山さん:eスポーツは本当に楽しいですもんね。いろんな業界と比べても、こんなに悩ましくて、こんなに面白い世界は他にはなかなかないんじゃないかと日々感じています。
谷田さん:その難しさと面白さを、もっと多くの人に届けていきましょう。REJECTさんが目指す、世界一のその先にある景色を一緒に見れると嬉しいなと思っています。
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2024年「Apex Legends」世界大会でAPAC North地域の代表チームとして初優勝
「好き」や「覚悟」が行き交うこの業界には、日々の挑戦と、ひとり一人のまっすぐな想いがあり、まだまだ多くの可能性が眠っているように思います。今回の対談を通じて、その積み重ねが確かに未来をかたちづくっているのだと、改めて感じました。どんな業界であれ、「覚悟を持って続けること」が景色を変えていくのかもしれません。
■関連リンク
・REJECT 公式サイト:https://reject.co.jp/
・REJECT 公式X:https://x.com/RC_REJECT
・REJECT 公式YouTube: https://www.youtube.com/@REJECTesports
・株式会社REJECT 代表取締役CEO 甲山氏 公式X:https://x.com/NasteLjp
・GLOE株式会社 代表取締役 谷田さん 公式X:https://x.com/akahossy
■取材・筆
GLOE株式会社
経営企画部 広報グループ長 / 人事部カルチャーデザイングループ長
金田 裕理