
デジタル社会におけるタレント活動を支え包括的にビジネス化を行う株式会社ホリプロデジタルエンターテインメント 代表取締役社長の鈴木氏と、GLOE代表取締役 谷田さんにお話を伺いました。
波乱万丈のキャリアとホリプロデジタルエンターテインメントの誕生
鈴木さん:14歳のときに両親が病気になったことがきっかけで、生活費を稼ぐために仕事を始めました。越境EC事業で初めて起業し、その後はSEO対策、ライブ配信サービスの立ち上げに携わるなどの経験を通して、24歳の時にインフルエンサー事業関連の会社を設立しました。
谷田さん:2015年ですよね、GLOEの設立も同年です。
鈴木さん:GLOEさんはeスポーツの可能性を信じて設立されたとのことですが、僕は個人の時代がくると信じ、そのサポートがしたくて設立したんです。“個”の影響力を最大限に活かすビジネスモデルを構築しました。ただ「インフルエンサーは一時のバズで終わるものではなく、職業として持続可能なものにするためには“人”を育てなければならない」と痛感して、2017年に退職しました。
谷田さん:その後は今に至るまでどんな生活を送っていたんですか?
鈴木さん:しばらくの間はニート生活を送っていました(笑)。そんな中、縁があってホリプロでアルバイトとして働くことになったんです。「起業家からアルバイトに転落した」と言われたりして、正直、悔しかったですね。
でも、その経験を通じて「自分がこれまで培ってきた知識や価値観を最も活かせる場所はここだ」と確信したんです。そして2018年8月、共同出資という形で株式会社ホリプロデジタルエンターテインメント(以下、ホリプロデジタル)が誕生しました。
やりたいことがあるなら、周囲の目を気にする必要はありません。不要なプライドは捨て、本当にやりたいことに全力で取り組むべきだと、あの時改めて実感しました。
谷田さん:ホリプロデジタル設立のニュースは僕も拝見していました。僕たちが出会ったのは2019年ですが、そこから定期的にお会いしてますよね。一緒にゲームをしたりゲーム内の同じクランに所属してみたり、「この先こうなるかも」とか市場の潮流について情報共有をする時間をする時間がすごく楽しいです。
鈴木さん:谷田さんは、僕の中で「かっこいい少年」なんですよね(笑)。エンタメビジネスは本当に難しい世界だと思っています。極端に言えば「お金を稼ぐ」か「人を感動させる」か。この相反する要素の狭間で、会社を成長させながら、その両立を追い求めているのが谷田さんなんです。
上場企業としての責任を背負いながらも、人を感動させることを決して諦めない。それを本気でやっている姿が、本当にすごいなと思うんです。そして何より、彼自身が常にワクワクしているし、周りの人たちをもワクワクさせています。そんな姿が「近所で裏技を教えてくれるお兄ちゃん」のような存在です。
誰でもバズれる時代だからこそ、育成とサポートが重要
鈴木さん:ホリプロデジタルでは、タレント事業やマーケティング事業を中心に展開していましたが、新たな挑戦として2023年8月にeスポーツ事業へ参入しました。そのきっかけを作ってくださったのが谷田さんです。
「ゲームが強い人が稼げないのはおかしい」と語る彼の目を、今も忘れられません。その言葉を聞いた時、僕自身がかつて抱いていた「インフルエンサーを職業にしたい」という想いと重なったんです。
エンタメ業界全体がeスポーツに本気で参入する流れをつくるべきだ。そのために、僕たちが先陣を切ることが責務だと感じました。
谷田さん:ゲーム界隈にいるインフルエンサーも芸能関係の著名人も、発言など立ち振る舞いを教育したり未来を予想しながら走ることにすごく前向きですよね。人気がでてきたから、今よければいいから、というエネルギーに負けそうになることも多い中で、これを続けてきてよかったと思える人生を送れるように手助けしなければならないですよね。
鈴木さん:芸能事務所としてタレント育成を行う中で、ホリプロデジタルでは“人として当たり前”の教育を大切にしています。谷田さんとも「エンタメ×教育、eスポーツ×教育の連携ができればいいよね」という会話はずっとしてきました。
ネットの世界では、“個”が無意識のうちに“無敵状態”になってしまうことがあると感じています。だからこそ、長く活躍し続けるためには、自ら考え、学ぶ力を身につけることが不可欠です。そのための仕組みを、僕はしっかりと作りたいと考えています。
ホリプロデジタルが持つ“人を育てる”ノウハウを活かせば、ゲームやeスポーツのタレント育成においても、確かな成長や変化が生まれると思います。
谷田さん:今は誰もが有名になれるチャンスがありますよね。本人の予測の範囲を超えた反応が突発的に起こることでインフルエンサーになれるチャンスが舞い込みます。
鈴木さん:今の時代、誰もがバズる可能性があり、誰でもインフルエンサーになれる時代です。少し厳しい言い方になりますが、一度バズったからといって、それだけに人生を絞らないでほしいと強く思っています。バズったことでフォロワーが数十万に増え、PR案件が舞い込む。その流れで「もう就職しなくてもいい」と判断した結果、1年後には仕事がなくなり、気づけばニート状態になってしまうケースも少なくありません。
だからこそ、若い世代が勘違いせず、正しい選択ができるような環境やサポートを整えることが重要だと考えています。
谷田さん:バズったりインフルエンサーとして活動を始めてからだと、炎上したりしないと耳に入らないことも多くなりますよね。誰しもがいつか目指すかもしれないという可能性を秘めているのであれば、教育の場など早いタイミングから教育することが重要だと思います。不幸せな人を作りたくないんですよね。本人が「この業界を選んでよかった」とずっと先の未来でも思えている状態を作りたいですね。
鈴木さん:そうですね、この業界に飛び込んできた人たちには、幸せになってほしいです。ホリプロデジタルとしても、単にマネジメントを行うのではなく、長期的なキャリアを支えるサポート体制を整え、eスポーツやエンタメ業界の発展に貢献していきたいと考えています。
2023年8月にeスポーツクラン「CherryBlossom」を立ち上げましたが、これまでエンタメ業界で培ってきたノウハウを活かすことで、eスポーツ選手たちがより長く活躍できる環境をつくれるのではないかと考えています。
Z世代・α世代に刺さるコンテンツ戦略と今後の展望
鈴木さん:Z世代をターゲットにしたマーケティングは進んでいますが、近年ではさらに若いα世代にも注目が集まっています。一見、似たようなアプローチが通用するように思われがちですが、実際はまったく異なる戦略が求められるんです。Z世代は「これを見ればこうなれるよ」という明確な意識付けが冒頭にあることで、コンテンツをしっかり見てくれる傾向があります。タイパ(タイムパフォーマンス)やコスパ(コストパフォーマンス)が重視されると言われますが、彼らが避けたいのは“時間を無駄にすること”ではなく、“無駄な経験”なんです。
一方で、α世代はZ世代よりも若年層であることが影響し、憧れよりも「自分にも手が届くかどうか」がコンテンツ選びの基準になっています。そのため、過度に計算された演出よりも、リアルで身近な存在のほうが惹きつけられる傾向があります。今後、Z世代・α世代に向けたコンテンツ戦略を考える上で、それぞれの価値観や視聴スタイルを理解し、適したアプローチを取ることが不可欠です。
谷田さん:オーセンティシティ、要するに「嘘つかなさ」「本物らしさ」が大切なんですよね。トレンドの波もありますが、完全に編集された動画よりも、リアルなライブ配信のほうが影響力を持ちやすくなっています。視聴者は嘘のないコンテンツを求めているんですよね。
鈴木さん:仮説ですが、ショートドラマの波が2年ほど前からきてますよね。短時間でリッチな作りの縦動画を多く見てきた視聴者にとって、差別化ポイントがなくなってきていたり、リッチが故に構えさせてしまっていると思うんです。そこに対して、緩さだったり「この人近い存在だな」と思えるコンテンツ作りが大切なんですよね。
谷田さん:嘘がなく、近い存在と感じてもらえることがうまくかみ合ったときに、その配信者のことをめちゃめちゃ好きになってくれるんですよね。
鈴木さん:α世代は本当にそうですよね。彼らにとって、現在地をシェアすることは当たり前の文化になっています。
例えば、SNSでは「誰と遊ぶか」を事前に決めるのではなく、「いつ・どこで・誰と」を決めずに、現在地を投稿して遊べる人をその場で募集するといったスタイルが広がっています。また、アバター文化の発展により、実際に近くにいなくても「アバターを通して会えればいい」という感覚を持つ人も増えているんです。
だからこそ、学校教育の中で情報リテラシーやネットの影響力についての学びを広げることが重要だと考えています。
一人ひとりが正しい価値観を持ち、健全に成長できる環境をつくることで、より良い未来を築くことができるはずです。さらに、こうした取り組みは、親御さんが安心して子どもを芸能やeスポーツの道へ進ませられる環境づくりにもつながると考えています。
■関連リンク
・ホリプロデジタルエンターテインメント 公式HP:https://horipro-digital-entertainment.co.jp/
・ホリプロデジタルエンターテインメント 公式X:https://x.com/horiprodigital
・「CherryBlossom」公式X:https://x.com/c_blossom_hde
・「CherryBlossom」公式HP:https://cherryblossom.ooo/
■取材・筆
GLOE株式会社
経営企画部 広報グループ グループ長/人事部 カルチャーデザイングループ長
金田裕理